先日、無罪判決を獲得しました。

 「警察官が検査前に覚醒剤混入の疑い」などの表題がついて、新聞などで報道されましたので多くの方がご存じかもしれない事案です。

 Y(被告人)さんは、接見当初から、「なぜ、自分から覚醒剤反応が出たか、わからん」と無罪を主張していました。Yさんから、話を詳しく聞いていく中で、警察官による混入の話が出てきました。

 今回の裁判では、Yさんの捜査を担当した警察官が証人尋問手続きにおいて、Yさんに現金書留で現金を送付したことについて、「送っていない」と嘘の証言をしました。ただ、後日になって、現金書留封筒という客観的な証拠の存在から、同警察官が偽証したことを認めました。そのため、本件では、証人尋問をやり直すという異例な事態が発生しました。もっとも、Yさんによれば、同警察官は、現金書留の件以外にも、複数の事柄で嘘の証言をしているとのことですし、私もそう確信しています。ただ、残念ながら客観的な証拠がないことから、同警察官は、他の事柄では偽証を認めることはありませんでした。

 私の推測ではありますが、本件で、裁判所がもっとも重視したのは、真実を明らかにすべき刑事裁判手続きの法廷で、現職の警察官が平然と嘘の証言をしたという事実だと思います。Yさんも、同警察官の証人尋問後に、「裁判で、あんなに嘘を言うとは驚いた」「いいんですか」と言っていました。

 裁判所は、真実が語られるべき裁判で、平然と嘘をつく警察官である以上、とても信用することができないのであって、覚醒剤を混入したことも十分にあり得るとの判断に至ったのだと思います。